知覚と判断は同時には起こらない(2)

物事を理解するために、逆から考えるという方法がありますので、そのパターンを使い、ここでは悪いコミュニケーション・スタイルについて考えてみましょう。典型的な悪いコミュニケーション・スタイルとはどういうものでしょうか。私でしたら、「意思の疎通どころか、自分が言いたいことだけを言い、相手の話を聞かない」という、深夜のテレビでよく見かける討論会のようなパターンではないのかなと思います。

ああした討論会をよく観察してみてください。大抵の場合、A氏の発言が終わらないうちに、B氏が反論を始め、そのB氏の反論が終わらないうちに、A氏が反論して、その反論が終わらないうちにC氏が発言を始めるといった具合に、だれかがその意見を完全に言い終わる前に別のだれかが発言を始めるということです。私たちは「人の話は最後までよく聞きなさい」と教わったはずです(笑)。ああした討論会では人の話を最後まで聞いていたら発言の機会がなくなってしまうから、他人の発言の途中で遮って発言を始めるのでしょうか。

実際は、討論会だけではなく、ビジネスの現場でもこうしたことはよく起こっています。私たちが注意しなくてはいけないのは、無意識に人の話を遮って話を始めてしまうことです。なぜなら、前回のブログで書いた知覚と判断の機能の働きで説明しますと、相手の話を遮って自分の話を始めるということは、相手の話の途中までは「聞く」という知覚機能が働いていますが、それに対して反論してやろうと「考えて」いるときには、判断機能が働いていますから、相手の話を「聞く」という知覚機能は働いていないのです。つまり、相手の話を遮って話し始めるということは、文字通り相手の話を最後まで聞いていないことになります。

ビジネスの現場で的確な反論をしようとするなら、本当は相手の話をきちんと最後まで集中して「聞く」必要があります。そうしないとトンチンカンな反論になり、感情だけがもつれてしまうことになります。もちろん、自分が話をしているのに、それを遮られるということ自体、気分が良いことではありません。知覚や判断の機能がどうしたという以前の問題で、感情問題になります。

プレゼンテーションにおいても同様です。特に注意すべきシーンは、自分のプレゼンが終了した後の質疑応答の時間です。大切なプレゼンテーションを行う場合、尋ねられそうな質問を事前に考え、想定問答集を作ります。プレゼンが終わり、緊張の質疑応答の時間です。案の定、重箱の隅を突くのが好きな上司から、想定した質問が飛んできます。あなたは心の中で、「はい、はい。来ましたね。答えは用意してありますよ。想定の範囲内ですね。たまにはオレの想像を超えて、もっと本質的な質問をしてみなさい」などと考え始めます。

この瞬間が危険なのです。なぜならあなたは既に質問の回答を頭の中で用意し始めているからです。頭の中で、この質問にはこの答えだな、と考えているときには「判断機能」が働きますから、相手の質問を聞くための「知覚機能」は働きません。当たり前のことですがなかなかできないのが、人の話を聞くときには全身全霊で最後まで「聴く」ということです。聞き終わってから「考え」始めても遅くはありません。相手の質問を最後まで聞く習慣付けとして、質問をもらったらその質問を復唱して、自分が質問の意図を正確にとらえているかどうか確認するよう教えています。質問にすぐに回答したいというはやる気持ちを抑えて、相手の話に集中しましょう。

2024年12月28日