シンガポールスリング

2000年に日本人材マネジメント協会を正式に発足させるに当たり、設立事務局を担当しました。

ベンチマークする組織として、世界最大規模の会員数を誇るアメリカの人材マネジメント協会(SHRM)に99年に行き、幹部へのインタビューを行いました。

ありがたいことにSHRMの幹部たちが、おしゃれなレストランで私の歓迎会を開いてくれたのですが、いきなり食事ではなく、カクテル・レセプションなるものでスタートしたのです。

人生で初めて立ちながらお酒を片手に、ウエイターが持ってくるおつまみを食べ談笑するという場を経験しました。

見たこともない光景の中に入っていった私は、ウエイターから飲み物を聞かれ、しゃれた食前酒など知らないので、緊張マックスでした。

日本式に「とりあえずビール」という訳にもいきません。周囲を見渡すとビールを飲んでいる人がいなかったのです。

皆カクテルのようなものを飲んでいたので、注文するためにどうにかカクテルの名前を思い出そうと、頭の中の少ない品揃えを探します。

アメリカの協会をベンチマークする前に、アジアでは香港とシンガポールの協会が活発に活動していましたので、その2つの協会を訪問して調べていました。

アメリカの協会を訪れる直前までシンガポールの協会を調べていたせいか、英語つながりで思いついたカクテルが、シンガポールスリングでした。

私はウエイターにやっとの思いで「シンガポールスリング、プリーズ」と言うと、「そんな酒はない」と一蹴されてしまいました。

私の緊張は限界を超えてしまいました。ほかに思いついたカクテルと言ったら、映画007のジェームズ・ボンドが好んで飲んでいる「ウオッカマティーニ」しか出てきません。

私は「ウオッカマティーニ、プリーズ」とウエイターに告げました。緊張していなければ、007と同じように、「シェイクではなくステアで」と言えた(?)でしょうが、もう限界でした。

もちろん私はそれまでウオッカマティーニを飲んだことはありませんでした。何しろウオッカがベースのお酒ですから、キツいのなんの。時差ぼけと空腹のせいで、頭がクラクラしました。

あっという間に酔ってしまいましたが、おかげで緊張がほぐれて、でたらめな英語でしたが幹部たちと話ができていたような、できていなかったような。

2025年10月28日