新任研修担当者が陥りやすい罠

研修に参加者アンケートはつきものです。評価点もそうですが、記述欄のコメントも大切なフィードバックになります。

ただし注意しなくてはならないことがあります。よくあることは、たった一人のネガティブな評価を取り上げて思い悩むということです。これは研修業務の初心者に多く見られることです。

たとえ大多数の参加者が良い評価をしていたとしても、たった一人のネガティブな評価に悩むというのは、なぜでしょう。

心理学的な観点から考えても、ネガティブな出来事のほうがポジティブな出来事の5倍強いインパクトがあるという研究結果もあります。

ここで考えなくてはならないのは、そのたった一人のネガティブな評価を誰が付けたかということです。

もちろんアンケートは匿名性を担保することも大切です。しかし、こと選抜研修においては、誰がどのように研修を受け止め、それに対してどのような評価をしたのかということも、その参加者に対する評価の参考になります。

ですので、私は選抜研修では、記名式のアンケートにすべきではないかと考えています。

今までの経験上、20~30人程度のクラスで、ほぼ全員が良い評価をする中、1人か2人くらい中程度か低く評価する人がまれにいる場合があります。

その人たちの参加者としての態度は、前向きなものではなく、なぜ自分はこんな連中と一緒に研修を受けなくてはならないのだと言わんばかりです。自分は優秀な人材なのだから、もう研修など必要ないという負のオーラを発しているものです。

あるいは、「Right time, right person」という言葉があるように、研修参加者に求められるレベルと研修参加者の現状のレベルがマッチしている必要があるのですが、そうでない場合にも、こうしたことが起こります。

マネジメントやリーダーシップといったソフトスキル系の研修に対してネガティブな感情を持っている人、あるいは興味や関心がない人人は、自己の人としての成長に対する関心がないか、専門分野の知識やスキルの向上のみに関心がある人です。

こうした人をマネジメントのポジションに登用すると悲劇が起こります。そもそもそうした人を研修に選んだり、昇格させたりしてしまったことが間違いなのです。GEでは、そうした態度を取る人は研修の初日に排除していましたが、そうしたことができる企業は少ないのではないでしょうか。

ネガティブな評価をした参加者がまともな人かどうか。そしてその意見がまっとうなものかどうか検討すべきです。

例えば、低評価をした人に対してインタビューをするというのもひとつの方法でしょう。「今後の改善に役立てたいので、話を聞かせてほしい」といったニュアンスでアプローチすると良いでしょう。

アンケート結果について思い悩む前に、誰がどのような意見を述べているのか、冷静に判断すべきです。

2025年10月27日