本を読んでいる最中に、ふと気になることが頭に浮かんでしまい、目は本の文字を追っているのですが、まったく頭に入らないまま数行読んでしまい、もう一度読み直したという経験はありませんか。
午前中の会議に出席していて、昼休みの時間が近づいてきました。あなたは別の部署の同僚と昼食をとる約束をしています。待ち合わせの時間が迫っているのに、会議は一向に終わる気配がありません。時計をちらちら見ながら、「早く終わらないかな。まったくどうしてこのプロジェクトの会議はいつも長引くんだ。そもそも自分はこのプロジェクトに乗り気じゃないんだよな」などとイライラしていると、急に進行係から指名されて意見を求められますが、直前の議論が耳に入っていないので意見の言いようがない、というようなことに心当たりはありませんか。
これは、「知覚」と「判断」は同時に起こらない、という心の機能による現象です。本の文字を読むという「知覚」機能と、考え事をするという「判断」機能は同時には起こらず、それは例えて言えばスイッチのオンとオフのように、いずれか一方の機能だけが働くようになっているからです。
整理しますと、知覚機能は情報を取り入れる働きを、判断機能は取り入れた情報を整理し、何らかの結論を導き出すという働きを意味します。これは、スイスの心理学者カール・G・ユングによって提唱された心の活動です。私はこの心の働きについて、リーダーシップ研修、特にコミュニケーションやプレゼンテーションの研修で必ず教えています。
私がなぜ、コミュニケーション研修などでこの2つの機能について説明するかというと、これらの機能が同時に起こらないということを理解し実践することが、より良いコミュニケーションをとることに直結しているからです。
(続く)