トレーナー認定試験こぼれ話

私自身、GEでは10コースほどの資格認定試験をトレーナー候補者として受験しました。認定試験のための準備はとても大変です。どの部分を担当するかという割り当てが知らされるのは、早くて1週間前、通常は2-3日前、時には前日ということもありました。

たいていの場合認定試験の期間は、通常の研修コースと同じ期間で行われます。プレゼンテーション研修は、通常のコースが2日間研修ですので、認定試験も2日間です。問題はリーダーシップ・コースです。通常コースは、最短でも5日間連続ですから、認定試験も5日間行われます。

今でも忘れられない認定試験は、2009年にクロトンビルが新たに導入したリーダーシップ研修の試験です。最初にニューヨークの本拠地で数クラス実施して、その後全世界で展開することになりました。世界のクロトンビルスタッフから5人がトレーナー候補として選ばれ、私もその1人となりました。クロトンビルの同僚たちとまずは通常コースに参加者として加わりました。どのコースでも認定試験を受けるためには、当該コースに参加者として全課程を履修することが求められます。

ニューヨークで開催された通常コースの研修が月曜から金曜まで実施され、金曜日の夕方に、トレーナー用の5㎝ほどの分厚いマニュアルを2冊渡されました。全部英語です。いっぺんにそれほど大量の英語の書類を手にしたのは人生で初めての経験でした。認定試験は週明けの月曜から金曜まで実施されます。分厚いアニュアルを読むだけでも
土日で間に合うかどうか分からないのに、その内容を理解して試験前日に割り当てられる部分の実演に備えるなどということが果たしてできるのだろうかと途方に暮れました。

イギリスとオーストラリアから参加したクロトンビルの同僚たちは、土曜はマンハッタンに繰り出し、そのまま市内のホテルに泊まって週末をエンジョイするというプランを立てました。私も一緒に行こうと誘ってくれましたが、英語が母国語の彼らと私とでは試験に対する準備の事情が違います。私はその魅力的な誘いを丁重に断り、誰もいない週末のクロトンビルに残りました。

金曜の夕食から日曜の昼食まではクロトンビルのレストランは閉まりますので、宿泊棟の軽食コーナーに用意されるサンドイッチとカップラーメンを一人寂しく食べながら試験に備え、英和辞書を片手に膨大な英語と格闘することになりました。当時私は49歳。50歳を目の前にしたオッサンになってまで、大学受験みたいな猛勉強をしなくてはならない事になるなどと想像もしていませんでした。

日曜の夕方にクロトンビルに戻ってきた同僚たちは、マンハッタンで過ごした週末の出来事を楽しそうに教えてくれました。私の頭は、彼らを恨めしく思う余裕もないくらい英語で一杯になり、爆発寸前。耳や鼻からアルファベットが漏れてくるのではないかと思うほどでした。

翌週の認定試験を何とか乗り切り、私は合格することができましたが、マンハッタンに遊びに行ったイギリス人は不合格となりました。不合格のままではヨーロッパで新規の研修を展開できなくなってしまいますから、後日再受験という処置となりました。

2024年08月01日