用字用語については、編集部で統一した基準がありました。
それは共同通信社の『記者ハンドブック』という辞書のようなものがあり、それに準拠して記事を書いていました。
記事を書く前までは、まったく気にしていなかった用字用語でしたが、いったん仕事として文章を書き始めますと、この用字用語に神経を使うようにならざるを得ませんでした。
取材から戻って記事を書き始めますと、果たしてこの単語は漢字とすべきなのかひらがなにすべきなのか、送り仮名はこれで合っているのか、どの漢字を用いるのが正しいのか、数字は洋数字を使うのか漢数字を使うのか、カタカナ表記はこれで合っているのかなど、悩みはじめます。
実際悩んでいる場合ではなく、締め切りに追われていますので、記者ハンドブックで調べることになるわけですが、こうした作業をしていますと一向に記事の執筆が進みません。
しょっちゅう参照していた記者ハンドブックは、一年も経たない内に使い古したような見た目になりました。
こうした苦労は、独立してから本を書くようになったときに、大いに役立ちました。
本を執筆するときは、私にとって用字用語のよりどころである記者ハンドブックを用いて書きました。
ところが出版社には、新聞記事とは異なる用字用語の基準があって、編集者に「赤」を入れられて戸惑うこともありましたが、次第に慣れていきました。(続く)