人生の岐路(4)

MBAを修了したら、独立したコンサルタントになろうと考えていました。仕事があるかどうかまったく見通しがありませんでしたが、どこかの会社に就職しようという考えはありませんでした。

この考えは母親の影響が大きかったと思います。母は、独立した裁縫師として収入を得ていました。

私が大学を卒業して就職してからも、ときどき「いつまで会社で人に使われているんだ。独立して自分で生計を立ててみろ」などと発破をかけられていました。

こうした刷り込み(?)によって、いつかは独立してやるという気持ちが自分のキャリア形成の根底に流れていました。

MBAの2年生のとき、ゼミの指導教授からアルバイトしないかとオファーがありました。NTTデータの歴代経営者たちにインタビューを行い、ビジネス・ケースを作成するというものでした。

上智大学の教授と一緒にこの仕事を行い、ケースを同社に提出しました。このとき一緒にケースを作成したご縁で、この教授からの要請により、後年、上智で教えることになります。

NTTデータに提出したケースが好評で、同社の研修子会社に入社して、このケースを使った研修を作ってくれないかとのお誘いがありました。

独立したコンサルになるためには実務家としての経験も必要だと考え、約3年間、同社に勤務することになりました。

まだMBAを修了する前から研修子会社に入社して、通学パスで通勤したというお得な(笑)期間を経験しました。

もしMBAのときにケースを書くアルバイトをしていなかったら、NTTデータの研修子会社に行くこともなかったでしょう。

このアルバイトを世話してくれた教授は、日本人材マネジメント協会を設立するときの委員に参画していただいた方です。

私が同協会設立プロジェクトに関わっていなかったとしたら、また、設立メンバーとしてその教授に関わっていただけなかったとしたら、私のキャリアは大きく違っていたことでしょう。

NTTデータの研修子会社に就職しなかったら、実務家としての経験もないまま独立したコンサルを名乗り、仕事もないままに日々を過ごし、その結果、再就職活動をしていたかもしれません。

2025年11月28日