人事のプロフェッショナル40万人が集まる世界連盟の日本代表組織をつくりあげる過程で、主要各国の代表者たちとふれあって、私が強いインパクトを受けたことがあります。
それは、彼ら/彼女らの多くがMBAのタイトルを持っていて、人事という職能を経営全体の中でとらえて考えていたことでした。
私は当時、人事という職能を人事という枠組みの中でしか考えていませんでした。
産業界ではそうした思考が一般的でしたが、世界の動向を知っていた一部の学識経験者たちは、「経営人事」という言葉を用いて、「経営の中の人事」という位置づけの大切さを説いていました。
私は自分が、「井の中の蛙」どころか「コップの中のメダカ」以下であることを思い知りました。
世界連盟の主要国の代表者たちのように、人事や人材開発という職能を、経営の中で考えられるようになりたいという思いは、日ごとに募るばかりでした。
私はいてもたってもいられず、妻にも相談しないで会社を辞め、MBAに挑戦することを決めました。
MBAに合格してから会社を辞めるというのが一般的な順序なのでしょうが、私は自分を追い込むため、会社を辞めてからMBAの試験準備を始めました。
妻と幼い子供二人を養っていた身としては、無謀なチャレンジであることは承知していましたが、私の知的好奇心は家族を路頭に迷わせるリスクを上回っていました。
受験に失敗したらどうしようということも当然考えながら試験の準備をしていました。特段のスキルもない私ですが、車の運転免許と学生時代にガソリンスタンドでアルバイトをした経験を生かして危険物取扱者の資格を持っていました。また一応、行政書士の試験にも学生時代に合格しました。
ですので、もし不合格だったら、再度MBAにチャレンジするため、宅配便の運転手かタクシーの運転手をしていたかもしれません。あるいはガソリンスタンドかどこかの行政書士事務所で働いていたと思います。
あるいは現実の厳しさに直面して、MBAを諦めて再就職活動をしていたかもしれません。実際はこの可能性が高かったのかもしれませんね。