誰だっけ(1)

先方は親しげに挨拶してくるものの、こちらの記憶に相手の顔や名前、どこで会ったのかさえ記憶にないことってありませんか? そういう状況であなたはどのように対処していますでしょうか。

都内の駅や街角で「どうも田口さん、お久しぶりです」などと声をかけられることがたまにあります。

私は気が弱いので、「どちら様ですか」などと聞けず、相手を覚えているふりをして「ああ、どうもどうも、ご無沙汰しています」などと答えてしまいます。

少し話をしてみますと、企業研修の参加者であることが多いのです。長期にわたって同じ参加者に研修を行うような場合は別ですが、1日だけの研修や講演の場合、相当印象深くなければ、その中の一人を数年以上覚えているということはなかなかないのが現実です。

先日、知人に相談事があるからと会食に誘われ、そこに私を知っているという人が同席するというのです。

事前にその人の名前を知人から聞いておけば良かったのですが、もらったメールの文面からすると私が知っていて当然という感じでしたので、会えばわかると思っていました。

会合の席に行ってみますと、まったく記憶にない人が私の知人の隣に座っていました。その人は私に挨拶するでもなく、にっこりとするばかり。

その人は私の知人に対して、私と一緒したことがあると言っているということだけ事前に聞いていたので、その人に恥をかかせてはいけないと思い、私は「ああ、どうもご無沙汰しています」と言っておきました。

その人は名前を名乗るでもなく、私とどこで会ったのかも言わないまま、食事が始まりました。(続く)

2025年11月14日