笑ってはいけない研修

ある企業の30代後半、将来の幹部候補者たちに対する選抜研修をしました。

その企業に対しては過去10年間にわたり、同様の年齢層の幹部候補者たちの研修をしてきましたが、この2~3年でどうも参加者の様子が以前と違うように思えました。とにかく共感性が低いというのが大きな違いの一つです。

その企業が属する産業の特性によるものだと思いますが、共感能力があまり高くない人たちが選択する可能性が高い業界でもあります。

30代の人たちの共感能力が低くなっていると感じられるのは同社に限らないことですが、同社はその傾向が顕著でした。

休憩時間に参加者と話していましたら、なんと新入社員研修でとにかく「笑わないこと」を徹底的にたたき込まれたそうです。

新入社員研修は当時、研修所の宿泊施設に泊まり込みで行われたそうですが、講師役の先輩社員が夜間、懐中電灯を持ってそれぞれの宿泊部屋を巡回してちゃんと寝ているかどうか確認していたとのこと。

そのほかのいろいろなエピソードも聞きましたが、私はテレビで見た刑務所のドキュメンタリー番組みたいだなという印象を受けました。

以前から共感能力に問題がある会社だと思っていましたので、研修プログラムには、共感能力を試す演習を組み入れていました。

今回も実施しましたが、案の定、今年もとても共感能力が低い人が大多数であるということがわかりました。

普通の共感能力を持っている人でも、仕事そのものや職場の環境によって共感能力が低くなってしまうことがあります。外科医などはその典型的な例としてよく挙げられます。

他のクライアント企業では笑いが起こるような場面でも、その会社では誰も笑わないのは、私の腕が落ちたのではなく(笑)、新入社員時代の研修に始まり、仕事では厳しいノルマに追われ、共感能力をそぎ落とされ続けてしまった参加者に問題があったというと、言い過ぎでしょうか。

笑うことが許されない研修や職場。私にとっては考えただけでゾッとしてしまいます。

2025年11月10日