人材開発担当者のコンピテンシー(2)

一般に、プロが集まっている集団と、素人集団が戦った場合、その勝敗は目に見えています。

人材開発という職能においては、この対比が外資系企業と日本企業との間で際立っています。

先日ある日本企業で研修を行った際に、最近その会社に転職してきたばかりという事務局の人から相談を受けました。

前職でも研修の担当だったそうですが、企画段階からベンダーにほぼ丸投げしていたので、研修を企画するために何をどうしたらよいかわからないというのです。

現職では今後、いくつもの研修を自分で企画していくことが求められているそうで、その悩みようは切実なものでした。

そうしたことさえ職場の上司や先輩に相談できない、またインストラクショナル・デザインなど基本的なことについての指導もないし、もちろん育成プログラムも用意されていないという実情があるわけですが、こうしたことはその会社だけの問題ではないのがとても残念です。

いろいろと聞いてみますと、職場の上司や先輩も研修や人材開発については素人で、相談しようがないとのこと。

本人は、今後も人材開発の専門職としてキャリアを積んでいきたいという意向があるということなので、研修の帰り際の立ち話でしたが以下のようなアドバイスをしました。

私が人材開発担当者の育成コンサルティングで使用しているコンピテンシー・モデルや、インストラクショナル・デザイン・モデル(CADDIES)、参考になる書籍、初任研修担当者に対する研修を行っている機関などをお知らせしました。

そして人材開発部門のスタッフとして、その存在感を示す最も良い方法は、教えること、つまり研修のインストラクターを務めることであるということも申し添えておきました。

そのためには自分で研修をデザインし、コンテンツを作り、インストラクターとして実施できるようになることを目標としてほしい旨も伝えました。

人材開発部門で働くスタッフに求められるコンピテンシーを定義したり、人材開発のプロとしてのキャリアモデルを提示したりすることは、日本企業ではあまり取り組まれていないことかもしれません。

しかし少なくとも求められるコンピテンシーくらいは検討してみてはいかがでしょうか。自己の職務を全うするためにも、そして将来に向けた成長のためにも、どのような能力(知識やスキル等)を習得するべきかという指標になると思います。(続く)

2025年11月02日