GEで教えていたとき、参加者とはフレンドリーに接しましたが、厳しくするところはとても厳しくしました。厳しくしていたと言っても、むやみに厳しくしていたわけではありません。
GEでは研修の開始時に「グラウンドルール」を作成し、参加者全員の合意を得ることにしていました。つまりこのルールを破った場合は、厳しく対処していたというわけです。
私がどのように厳しく対応したのかを日本企業のクライアントに話すと、自社では絶対にできないという反応ばかりです。
GEで教えていた頃の残像(?)が残っていた独立当初、少し厳しいことを参加者に言うと、とてもへこんだ様子になり、そんなにナイーブではグローバルビジネスでは勝てないな、などと思ったこともありました。
その様子を見ていた事務局の人から、あまり厳しくしないようにしてくださいなどというリクエストが来たこともありました。
これはダメだと思いましたが、案の定、そうした会社はこの10年間でじりじりと業績を落とし続けています。
優しくすることと甘やかすこととは違います。どうも日本企業の人材開発の人たちは、参加者をお客様扱いして甘やかしているように思えてなりません。
とくにグローバル研修は、ひと昔どころかふた昔以上前の「ご褒美研修」と勘違いしているのか、会社の経費で日本旅行をさせてあげているような感覚の会社があります。
そんな会社では、参加者のほうも研修よりも研修後や、前泊・後泊での観光に重点を置いていますから、研修自体に焦点を当てられていない人が多くいます。
そうした会社の事務局は、遅刻を繰り返して研修の進行を妨げている人や、講義中あるいはチーム討議中にメールや社内SNSをして研修に集中していない人に注意もしません。
選抜研修だというのに自社の無機質で狭い会議室で研修をする。弁当も出ないし食費の手当もない自力解決。弁当が出たと思ったら、何かの刑罰かと思うほど実に粗末な弁当だったりするのです。
当然のようにフリードリンクもギフトもないという実に「不思議なお客様扱い」になっています。
研修とは一体何なのか、何のために行うのか。その大目的から考えれば、参加者をどのように扱うべきかが見えてくると思います。研修のための研修になっていないか、今こそよく考えなくてはならないのではないでしょうか。