この10年あまり、「本物のリーダーシップ」、いわゆるAuthentic Leadershipを教えてきました。リーダーシップの世界では、この本物のリーダーシップがメインのトピックになっていますが、なかなか日本では広がりを見せてきません。おそらくどのようなコンテンツで本物のリーダーシップを教えたら良いのか、あまり理解されていないことがその原因かもしれません。
どのように教えたら良いのかについては、企業秘密(笑)ですので、ここでは本物のリーダーに見られる特徴のひとつについて述べてみたいと思います。研修では、5つの特徴について参加者と議論しますが、そのひとつが「謙虚さと自信に裏付けられた幅広く永続的な人間関係を構築・維持できる」というものです。
この特徴について議論しますと、多くの場合、「謙虚さと自信は両立するのか」という質問を受けます。ペンシルバニア大ウォートン経営大学院のアダム・グラント教授が言う「自信に満ちた謙虚さ」は、考えられないということでしょう。ハーバード・ビジネス・レビュー誌に掲載された記事にありましたが、自信のなさと謙虚さを混同しているケースが多いようです。
記事によれば、その違いを理解するには、自分にとって大切な価値観を2-3書き出し、それを実践するために自分のスキルや能力をどのように活用しているか書き留めること。これにより、自分に対する猜疑心が和らぎ、安心感が増して、自己弁護に走らずに自分の限界を認められるようになるとされています。謙虚さは、卑屈な行動や態度ではなく、他者を敬う気持ちから生まれるものです。
また、謙虚な人たちは皆、高い自尊心を持っているということもわかっています。そうした人たちは、自分が何者かを知っており、そのことに満足しているのです。このように人は、自分自身に対して本当に満足している場合のみ、謙虚になれるものです。
自尊心の低い人たちに限って、他者に対して攻撃的で、傲慢で、傷つけるような発言や行動を取ります。このような人々は、誰か他人をおとしめたり、引きずり下ろしたりすることでしか、自分に自信を持てないのです。この数年、ネット上での他人に対する誹謗中傷が社会問題になっていますが、自分に自信がなく、満足していない自尊心が低い人たちが行っている行為なのでしょうね。