3人の石工

ある夏の暑い日に旅人が、大きな岩山が続く道を1人で歩いていました。目もくらみそうなくらいの日差しを受けて、1歩ずつ足を前に出すのがやっとです。それまでうつむき加減で歩いていた旅人が、ふと顔を上げると前の方で岩山から石を切り出している1人の石工が見えました。その石工に近付いて旅人は話しかけました。

「この暑い中、ずいぶんと精が出ますね」。すると石工は旅人に振り向きもせず、不機嫌そうな声で吐き捨てるように言いました。「何の因果か知らねぇけれどよ、こんなくそ暑い中でよりによってこんな仕事をさせられるなんて。給料だって安くて話にならねぇ。一体、俺様が何をしたってんだ。そもそもだなぁ・・・」と文句を言い続ける石工を横目にしながら、旅人は歩き始めました。

しばらく歩くとまた、石切場で1人の石工が先ほどの石工と同じように石を切り出していました。旅人はまた声をかけました。「この暑い中、ずいぶんと精が出ますね」。するとその石工はちらっと旅人を見て、そして弱々しい声で言いました。「ええ、本当に暑いですねぇ。私だってできればこういう暑いところでこんな大変な仕事をしたくはないのです。でもね、家には妻と3人の幼い子供がいましてね。妻は病気がちで働けませんし、子供のミルク代もかかります。私は頭が悪いのでいい仕事に就けないのです。こうして仕事をさせてもらっているだけでもありがたいと思えと、自分に言い聞かせているんですよ」。旅人は、「そうでしたか。それはそれは。頑張ってください」と声をかけると、また歩き始めました。

しばらく先の岩山に差し掛かるとまた、1人の石工が石を切り出していました。「この暑い中、ずいぶんと精が出ますね」と旅人が声をかけると、その石工は真っ黒に日焼けした顔を旅人に向けました。額からは玉のような汗が流れています。その石工は、前の2人とは違ってにっこりと微笑みながらこう言いました。「旦那。私が切り出しているこの石が何に使われるかご存じですか」。旅人は、「いや、分かりませんが。何になるのですか」と答えました。石工は答えました。「教会ですよ。今度、この町に新しくできる教会の床や壁、階段に使われるんです。日曜日になるたびに、私が切り出した石を使った教会に町の皆が集まって祈りを捧げるんですよ。こんなうれしいことはないですよ。町の皆の役にも立てるし、その上給料までもらえる。本当にありがたい仕事です。教会に集まる人々の喜ぶ顔を思い浮かべると、こんな暑さなんてのは吹き飛んじまいます」。

最初の石工が持っている仕事に対する考え方は、「呪いの勤労観」です。現状に対する不平や不満の原因をすべて他者のせいにする考え方です。2人目の石工の勤労観は、「諦めの勤労観」です。お金など何かのために仕方なく働いているという考え方です。最後の石工の勤労観は、「喜びの勤労観」です。自分がしている仕事の意味付けができていますし、他者への貢献と結び付けられています。

3番目の石工は自分のしている仕事の最終結果を見据えて、その結果に対して自分が貢献していることを認識しています。しかし前の2人は、自分がしている仕事しか見ていません。優れたリーダーは、自分のしている仕事に対する意味付けができるだけではなく、部下の担当する仕事の意義を彼らに説明して動機付けることができます。さらにその上を行く優れたリーダーは、部下に仕事の意義を説明しなくても、自分で仕事の意義付けができる部下を育てます。

2025年01月31日