研修などで、ある考え方について説明した場合、それを聞いた参加者の反応は大きく2つに分かれます。
こちらが提供した考え方やその具体的事例を聞いて、その大切なエッセンスを抽象・概念化して取り出し、それを自分や自社の事例に当てはめて具体的に解釈して理解できる人がいます。一方で、こちらが提供した考え方や具体的事例が、自分や自社の事例とぴったり合わないと理解できない人がいます。
前者のタイプの人は、いわゆる「一を聞いて十を知る」人です。こういう人たちが多く集まった研修ですと、研修は大変スムーズに進行できるだけではなく、参加者から良い質問や意見をもらうことができて、こちらも大変勉強になったという充実感を得られます。後者のタイプの人が多い場合は、参加者が理解・納得してもらえるまでたくさんの事例を提供したり、比喩的な表現を用いて説明したりする必要があって、研修は予定通りに進まず、疲労感も大きくなります。
前者のタイプの人は、一見何の共通性もないように見える個別事象の間に、共通項を見いだしたり、まだ見えない未来を描く力があったり、概念の中で想像力をふくらませる力があります。こうした人たちは、演繹的なアプローチを取り、まずあるべき姿を描いて、そこに至るためには何をすべきかを設定し、ゴールに向かってメンバーたちを奮い立たせることができるリーダーたちでもあります。
後者のタイプの人たちは、目の前のことに集中し、帰納的なアプローチを取ります。もちろん、現場・現物・現実という三現主義に代表されるように、目の前にある問題を解決するということは大切です。しかし、現在という時間軸における出発点から、1つずつ改善を積み重ねて行くうちにゴールに到達しようという方法論は、環境変化が激しく、何が起こるかわからない時代環境においては注意が必要です。なぜなら現状の延長線上にゴールを設定して、目の前のことに集中しているうちに、環境変化によっていつの間にか目指すべきゴールが変わってしまっている可能性があるからです。
日本の技術がガラパゴス化した過去の事例を見てみればわかるように、環境変化から取り残されてしまうと、独特の進化を遂げてしまうわけです。たくさんの事例を知っていることは大切ですが、そこからどのようなコンセプトを抽出することができるのか。日頃からの訓練が必要になります。