ベンチマークの対象者

約30年前、大学での選択科目として心理学関連の授業をとりました。専攻は社会人教育で、産業教育(=企業における人材開発)のゼミに入っていたため、心理学にはとても興味がありました。

心理学関係の授業で、今でも忘れられないシーンがいくつかあります。30年経っても忘れていないということは、それほどの衝撃を脳が受けたのでしょう。そのうちのひとつは、職業とその職業に求められる知能指数(偏差値)です。何が衝撃的であったかといえば、大学教授と落語家がほぼ同スコアだったということです。

確かに大学教授には高いIQが必要なことは、誰でも想像できます。しかし落語家も同様に高いIQが必要だということには意表をつかれ、そのことを記したグラフは今でも私の脳にこびりついています。以降、「笑点」の見方が変わりました(笑)。尊敬のまなざしです。

確かに落語家としてたくさんのネタを記憶することも必要ですし、大喜利では当意即妙な回答が求められます。
脳科学的にいえば、彼らほど右脳と左脳の連動が求められる職業はないのではないかと思います。

やがて就職して4-5年経った頃、あるコンサルタントの先生と多くの会社の仕事をしました。その先生は、オヤジギャグをはじめ、まるで芸人みたいに面白い話を入れ込みながら研修を進めるので、参加者をまったく飽きさせない人でした。年齢は私より30歳上でしたので、当時50代後半でした。

その先生に、「なぜそんなにダジャレをおっしゃるのですか」と尋ねたことがあります。
「研修を楽しくして参加者を飽きさせないため」という答えが返ってくるかと思ったのですが、そうではなく、
「自分の頭の回転速度を落とさないため」だというのです。

研修講師は、参加者のレベルや理解度などそのときの状況に応じて臨機応変に話の内容を組み替えたりする即興性と、その組み替えるべき話(引き出し)の数の多さが勝負だというのです。このことを実現するには、頭の回転数を高い状態に維持しなくてはならないので、その訓練のためにもダジャレを思いつくように、いつも頭の中で言葉の変換をして考えていると言うのです。

私はその先生を非常に尊敬していましたし、自分もやがては講師になりたかったので、その日からダジャレにチャレンジしました。残念ながらその先生はもうお亡くなりになりましたので、近年の私のベンチマークの対象者は、「まいう~」でお馴染みの石ちゃんです(笑)。

右脳と左脳の連動を活性化させる方法として、ダジャレを言うことは最適です。
オヤジギャグと他人に馬鹿にされようと、めげることなく自分の脳のためにチャレンジしてみてください。

2024年05月02日