変われない人と組織(2)

リーダーシップを発揮して問題に向かうときに無視してならないのは、それまで培われてきた伝統や文化的背景です。伝統や文化は変革を嫌うものです。組織が複雑にそして大きくなればなるほど、すでにあるものを守ろうとするため、変化を嫌うということになります。

転職してきた経営トップは、いわゆるゴールデンパラシュート方式で前の会社の幹部たちを新しい会社に呼び込みました。経営トップは、前の会社と同様な文化や人に変えることを期待されたので、真摯に改革に取り組みました。しかし、もともとその会社にいた幹部連中から見れば、役員層に他社から降ってきた人たちが大勢いれば、それを大きな負のメッセージとして受け取ってしまいます。

新たな変革は、そのほとんどが失敗します。
成功にたどり着くのはごくわずかですが、それが新たな可能性への模索であることも真理です。

リーダーシップにはリアルな現実、特に負の部分と向き合う勇気が不可欠です。変革を急ぐために気心の知れた前の会社の幹部を呼び込みたいという気持ちは分かります。ツーカーの間柄であればなおさらです。しかしそうしたことが、もともといた幹部社員たちの面従腹背を生み出したことは間違いないでしょう。

リーダーシップを発揮するためには、変革を促す戦略を立てねばなりません。
その会社でも、トップが考えた戦略を実行するための部隊があります。

しかし残念ながらそのメンバーたちは組織変革のプロではなく、トップの考えた戦略を戦術として落とし込むことができませんでした。ビジネスマンとしての経験も浅く、実際にやっている仕事はオペーレーション業務で、そのことで日々忙殺されてしまいました。戦略を遂行させるためには、それなりのプロフェッショナルやエキスパートをそろえなければうまくいかないのは当たり前です。

変革は痛みを伴います。人は変革によって何かを捨てねばなりません。その捨てなければならないことやものを、相手に納得させる必要があります。そのためには、未来に持っていく価値観と、失うものの価値観をはっきりさせるべきなのです。しかし人は、現実を直視したがらないのも事実です。それは膨大なコストを伴うから。

リーダーシップは、自分の価値観を押し付けることではありません。
相手の中にある矛盾した価値観を明らかにする手助けをしてあげれば良いのです。
この会社では、この手間を惜しんでしまったのです。

2024年04月27日