まぜるな危険

洗面台のパイプ汚れを落とす洗浄剤のラベルに書かれた「まぜるな危険」という注意書きを見るたびに、私はいつも研修参加者の選定について同じことを想起してしまいます。

ずっと以前に、ソニーの人事責任者と話していたとき、「研修参加者のレベルを合わせることができたら、その研修はすでに7割成功したようなもの」ということで、意見が合ったことを覚えています。つまり、レベルがバラバラな参加者を同じ研修クラスに集めてはいけないということです。これは、選抜研修においては特に気をつけなければならないポイントですが、階層別の必修研修などにおいても同様に言えることです。

不思議なことに、どのような研修であってもそのクラスの参加者のパフォーマンスは、およそ2:6:2に分かれます。優秀とされる人たちだけが選抜された研修では、2:6:2に分かれたとしても、上位2割の人たちに遅れまいと、残りの8割の人たちは自らスピードを上げて、クラス全体のパフォーマンスは良い出来になります。

しかし、「まぜこぜ」の参加者が集まった研修では、下位の2割に残りの8割が引っ張られて、クラス全体のパフォーマンスが落ちてしまいます。この「まぜこぜ」の中身を見てみますと、単に能力だけの問題ではなく、やる気の問題が大きなウエートを占めます。

どのような人が、この「やる気」の問題をクラスに持ち込むかと言いますと、自分は優秀であり、このような研修に参加する必要などない、と考えている人です。こうしたマインドの人は、顔の表情や態度ですぐにわかります。そういう人がいますと、その人の発言や行動、態度が周囲の人たちに伝染して、クラスの雰囲気はどんどん悪くなっていきます。

GEで教えていたときは、こうした人は研修初日の早い段階で排除していましたが、独立後は外部講師として研修に関わっていますので、私の権限で排除するということはできません。クライアントの研修事務局に言って排除するよう要請したこともありましたが、結局はそのまま放置されました。

外部の研修講師として、どのような手段を講じることができるでしょうか?あなただったらどうしますか?

2024年10月15日