魅力的な研修とはどういう研修でしょうか。単にゴージャスな施設で研修を行い、驚くくらい豪勢な食事を提供し、5つ星ホテルのような部屋に宿泊させれば良いのでしょうか。
こうしたことだけで他社と競争しても、それらは予算が許せば天井知らずの競争になるだけですし、とくに優秀な人たちはこうした要因ではエンゲージされません。もちろん無機質で貧相な会場で研修を受け、驚くほどみすぼらしい食事を食べさせられ、最低ランクのビジネスホテルのような部屋に泊められるよりはマシですが。
日本を代表するような企業の研修施設において研修をしてきましたが、こうしたひどい経験をしたのは、ひとつふたつの話ではありません。日本企業は研修を苦行の場とでも思っているのでしょうか。研修は修行と同じなのだから参加者を甘やかさず、厳しく対応しろ、ということでしょうか。
外部の講師である私までがこの旧態依然たる考えの巻き添えを食って、2泊3日の研修をすると1~2キロダイエットできる研修施設があります。メタボの私には、これはこれで感謝すべきかもしれませんが、その施設から解放された帰宅途上で、それまでの貧相な食事の反動でボリュームのあるものを食べてしまうのは内緒です。では世界中の企業がベンチマークするクロトンビルはいったいどのような施設で、どういった研修をしていたかについては、拙著『クロトンビル』をご参照ください。
さて、私たちクロトンビルのスタッフが何より心を砕いていたことは、どのようなことであったのでしょうか。それは研修の参加者にどのような「経験」を提供すべきか、そしてどうしたらその経験を提供できるのか。そのためにどのように演出するかということでした。
単に研修を提供するのが自分の仕事と考えるのか、あるいはどのような経験を演出するのかと考えるのとでは、雲泥の差があります。研修を単に人材育成の場と捉えず、エンゲージメントの機会と捉えると、この経験をどう演出するかというアイデアが出てきます。