徳川家康が服部半蔵に、「忍び(忍者)の極意とは何か」と聞いたという話です。半蔵は黙って立ち上がり、ふすまを開けて敷居の上を歩いて見せ、「こちらでございます」と。
すると家康は怪訝(けげん)そうな面持ちで、「それだけか」と言うと、半蔵は、「私たちはたとえこの敷居が千尋の谷にかけられたものであったとしても、同じように歩くことができます」と返したそうです。
私はこの話を聞いたとき、プロの研修講師にも同じことが言えるなと思いました。
参加者が日本の中堅企業に勤める日本人であっても、世界的に知られるグローバル企業で働く世界中から選抜された経営幹部でも、同じように教えることができるのが本物の講師ですよね。
あるいは、このことは研修の環境、すなわち研修会場(施設)についても言えます。オフィスビルの中にある無機質な会議室でも、素晴らしい一流ホテルの宴会場でも、どのような会場で教えても同じようなインパクトを参加者に与えることができるかどうか。
研修の成果についての出来不出来を、参加者のレベルや施設、事務局の運営などのキュレーションのせいにしてしまいがちですが、研修講師としてはこの忍者の極意を忘れないようにしたいものです。