最初に就職した団体で新人の頃は公開セミナーの担当をしていましたが、自分で初めて手がけたのが「採用面接」のセミナーでした。そのセミナーはその団体でも初めて手がけるセミナーで、集客がどうなるかドキドキしましたが、追加開催になるほどの満員御礼状態でした。
有名企業の採用担当者の皆さん200人ほどとインタラクティブなセッションを行いましたが、その際に皆さんと共通認識として持てたことは、「どんなに注意深く面接をしても、5%は間違って採用してしまう」ということでした。人が人を評価するのですから、致し方ないことかもしれません。
当時、若輩の私が感じたことは、「その5%の人たちは、その会社でその後どういうキャリアを歩むのだろうか」ということでした。ずっと居座り続ける人、転職する人、状況が変わって大活躍する人、実際にどうなったかは分かりません。研修の仕事を長年行っていますと、同様に「その研修室にいてはいけない人」も、やはり5%はいるということです。これはGEでも日本の企業でも同様に言えます。参加者が40人いれば、必ず2人は「そこにいてはいけない人」がいます。
ただ、そのパーセンテージは、私が通常行っている選抜研修における比率であって、課長や部長等昇格時の必修研修となりますと、その比率はぐーんとアップします。ザックリ言って、間違って昇格してしまったとしか思えないような人の比率は、平均で10%程度になります。世間水準に照らし合わせて考えてみても、50%以上が「間違って昇格してしまった人」がいる会社の研修をしたこともあります。
傍から見ると大変不幸な会社だと思いますが、働いている人たちはその環境が普通だと思っていますので、なんとも思っていません。そうした会社の社員は当然、「井の中の蛙大海を知らず」で、極めて内向き思考ですから外のことを知ろうとしませんし、知らないでも済んでいるような業態・職種であることが大半です。自分たちがいかに「異常」であり、自分たちの常識が世間では非常識であるかということさえ知りません。
こうした特殊な会社は別として、会社組織も生き物であると考えるなら、当然新陳代謝が必要になります。この新陳代謝の目安が退職率ということになるでしょう。誤って入ってきてしまった人が5%いるのなら、この人たちが会社を出て行ってくれるとすれば退職率5%程度が妥当なのでしょう。
上述した特殊な会社は、その退職率は極めて低く、異常な状態の会社をとても気に入っています。その人たちの大半は新卒からそこで勤めている人たちです。キャリア採用も少数ですが行っていて、その人たちはその組織の異常さに入社後、当然気が付きます。その人たちはやがて、異常さに慣れてしまう人と、慣れずに他社へ転職する人に分かれます。
研修を行うときは、「このクラスに間違って参加している人は誰なのか」を早いうちに探し出すことが大切です。
その間違って参加している人は、人体におけるがん細胞と同じ存在です。その人たちへの対処次第で、研修の行方は大きく異なってしまうのです。