20年くらいリーダーシップ研修をしてきて、この数年頻繁に考えるようになった「問い」は、果たしてリーダーシップというものは教えることができるものなのだろうかということです。この問いを自分に向けるなら、長年リーダーシップ研修をしてきた私は、一体何を教えてきたのだろうか、ということになります。
もちろん研修では、リーダーシップとは何か、というトピックからリーダーシップを因数分解して、その構成要素を知識やスキルとして教えてきました。しかし、それらは「リーダーシップ・スキル」であって、「リーダーシップ」の本丸ではありません。つまりリーダーシップを因数分解した結果としての知識やスキルを身につけたら、それでリーダーシップを発揮できるのかといえば、そうならないのが悩ましいところです。
つまり、知識やスキルだけを教え込んでも、何かが足りないのです。この物足りなさが、研修でリーダーシップ・スキルは教えられるけれど、リーダーシップは教えられないのではないか、という問いを一層強いものにしてきました。
知識やスキルを習得しても、それを行動に移さ(せ)なければ意味がありません。知識やスキルを行動に転換するためにはいくつかの方法がありますが、大切なことは知識やスキル(スキルセット)に加えて、しっかりとしたマインドセットを持つことが肝心です。
では、そのマインドセットはどのようにして習得・獲得できるのでしょうか。研修などの手段によって教えることが可能なのでしょうか? この点が、「リーダーシップ」の本丸は教えることができるのか、という問いと関わってきます。
リーダーが持つべきマインドセットが何なのかという定義にもよりますが、それらは教えられるものと教えられないものがあります。教えられないものについてはどうするのかといえば、研修であればその参加者が自らそのマインドセットの要素について自分の中にあるものを見つける、あるいは気付いてもらう手助けをするということになるでしょう。
もし自分の中にまったく見当たらないのであれば、その要素を獲得するための手段を教え、その獲得のための意欲を持てるようにしてあげる必要があります。直接教え込むということは、スキルと違ってできないのではないかと思っています。
研修は、問題を解決する打ち出の小槌ではありません。ただ、気付きの場を提供するくらいの役割はできるかもしれません。リーダーシップを教えられますという人がいたら、ぜひお目にかかって教えを請いたいと思う今日この頃です。