最高の研修

企業の研修に携わって約30年。その関わり方は人事部の実務家として、あるいは教育提供側のベンダーとして、
企業グループ内の教育子会社の立場としてなど多様です。

立場の違いから、これが最高の研修だったなと思い起こされるものは異なります。例えばコンサルタントとして研修講師を務め、自分としてはあまり手応えを感じられなかったとしても、参加者や事務局である人事部からの評価がすごく高いこともあります。またその逆の結果になることもあります。

しかし、こうした立場の違いを超えて、いずれの立場からも共通して「これが最高の研修をつくるための条件である」と言えるような要素は何なのでしょうか。私はこのことについて長年考え続けています。そもそも「最高の研修」をどのように定義するかが問題です。

研修期間中に最高の盛り上がりを見せるものが良いことなのか。実施後に研修の効果が業績向上に結びつくものが良いのか。研修の中身が大事なのか、有名な人を講師にすることで最高な研修になるのか。参加者同士のネットワークづくりができるものが良いのか。参加者の会社に対するエンゲージメントを高められるものが良いのか。優秀者が退職するのを引き留められるリテンションツールとして機能するものが良いのか。

例えば実務で必須の知識や技能を習得することが目的となっているテクニカル研修やスキル研修は、その研修によって参加者が得られる成果を比較的明示しやすいのですが、リーダーシップやマネジメント研修において「マインドセット」を高めるといった抽象的なことを学習目標に設定すると、その成果を何によって測定するかが時に問題となります。

研修効果測定のひとつの手段として用いられる参加者のアンケート結果が、果たして真実を映し出しているのでしょうか。はたまた講師による講師所感が客観的な観察結果を描き出しているのでしょうか。そもそも研修によって導かれる「期待される成果」や「学習目的」を達成できた研修が最高の研修なのでしょうか。

社内研修の講師を務める人たちに対する研修を行うときには、この「最高の研修」と「最悪の研修」について徹底的に議論します。あなたにとって過去に受講した、あるいは主催した「最高の研修」と「最悪の研修」はどのような研修でしょう。そしてその理由は何でしょう。その理由を因数分解すると、その構成要因はどのようなものになりますか。

2024年06月03日