研修の目的を時間軸で考える(事前編)

多くの企業研修では、研修の「最中」に最も焦点を当ててカリキュラムを組んでいると思います。その「最中」に向けて、研修の前に「事前」課題を設定している企業も多いと思います。ですが、「事前」に行うべきこと、そしてその目的を明確にしている企業はどのくらいあるでしょうか。

研修前になすべきこととして、単に事前課題を設定すればよいのでしょうか。事前課題を課された研修参加者は、その事前課題がどのような意味を持つのか理解できていますか。事前課題だけで、ワクワクした気持ちで前向きに研修初日を迎えることができますか。ワクワクまではいかずとも、余計な心配事や緊張感を持たずに研修に臨めるようにしていますか。

ある企業の選抜研修をしていたとき、参加者が「なぜ自分が選抜されたのかわからない」ということを言っていました。同様のケースは、複数の企業で耳にしました。その人たちは、人事部からメールが来て、そこには何月何日から何日まで、自社の研修所にて行われる研修に参加せよ、という趣旨のことが事務的に書かれていただけであったと言います。研修を主催する側が、研修を単なる業務知識やスキルを付与する場として考えていると、こういうことになります。

未だに研修は、修行、苦行の場であるというような無意識のバイアスにとらわれている企業が多いことに失望させられることがよくあります。修行に行くのだから、事前にいろいろと説明する必要はないということになるのでしょう。少なくとも事前に次のようなことはしてほしいと思います。

① 研修の狙いや大まかなアジェンダを含む、研修概要がわかるようなレター。特に選抜研修の場合、メールのベタうちではなく、会社のレターヘッドが付いた招待状のような体裁をとる。
② 事前説明会。オンラインでよいので、研修所管部門のトップからのメッセージ、事務局からの研修概要説明、可能なら主たる講師からのメッセージ、質疑応答を行う。
③ 事前課題の趣旨説明。事前課題には大きく2種類あり、研修内容と直接的に結びつく内容のものと、間接的に結びつくものがある。とくに後者の場合、事前にその目的を参加者に知らせておかないと、日本人の場合とくに不平を漏らす人が多いので注意。

2024年08月26日