昔からよく「三代目は身上を潰す」などと言われます。お金持ちの家の三代目が、財産を使い果たしてしまい、家を売ることになったという話が元になっている言葉です。会社についても、創業者から三代目で傾いてしまったなどという話はたくさんありますし、私がよく知る会社でも同様のことが起こりました。
会社において「三代目が身上を潰す」理由はいくつもあると思います。創業者の思いや、情熱、苦労といったものを直接・間接に知ることになる二代目とは違い、三代目になると会社という組織、財産、地位などが所与のものとなり、創業の思いや苦労などが伝わらなくなってしまうことが多いのでしょう。
研修担当者においても同様のことが多く見られます。新規研修の立ち上げには、社内外の折衝など実に多くの苦労を伴います。そうした苦労などについて、引き継ぎをされた二代目は、初代担当者から直接、話を聞くことができます。しかし三代目の事務局・担当者ともなりますと、人事異動や担当替えによって単にその研修の担当者になるということが多く、思いやノウハウが伝わりません。
クライアントの中には研修運営のマニュアルもなく、事務的な引き継ぎも曖昧な会社もあります。私の研修担当者は、1-2年ごとに人事異動で変更になり、三代目どころか現在では八代目くらいになっています。当該研修を発案した当時の担当役員の思いや、それを受けて開発した担当者の苦労などは、現在の担当者にはみじんのかけらも受け継がれていません。
そこではやはり三代目以降、事務的な引き継ぎも十分でなくなり、担当者が変わるたびに毎回、外部講師である私がロジスティクス関連のご案内をすることなりました。その会社では単に、ひとつの研修プログラムについての引き継ぎ問題だけではなく、研修組織全体としての問題を抱えるようになったのも、近年の危険な兆候として観察できます。
そもそも研修組織を立ち上げた人物の思いや情熱というものが当初からあったのかどうか。私は10年以上、その会社からそうした話を聞いたことがありませんので、そもそもなかったのかもしれません。一方で、人材育成に対して経営トップが強くコミットしている会社では、様相が一変します。何代担当者が変わっても、人材育成に対する経営トップの思想が浸透していますから、その思いや情熱などは、しっかりと受け継がれていきます。