研修は経験財/信用財で良いのか

人材開発担当の実務家および研修を提供するベンダーともに、
長年にわたって研修を「経験財」あるいは「信用財」として認識してきました。

実務家サイドは、「有名な大学の先生に研修や講演をお願いするのだから、その効果は今ひとつよく分からないが、先生を信用するしかない」と、まるで高僧のありがたいお経を聞かされて、中身はよく分からないが高いお布施を払うようなことになります。

研修や講演を提供する側から考えれば、ベンダーとしては事前にその内容を詳細に顧客である実務家に対して情報提供することはせず、日程表や教材のハードコピーを見せて事前説明するということで十分という認識がありました。

ベンダー側が顧客に詳細な情報を提供してこなかったのは、その研修ノウハウや知的所有権を保護するためでした。ご承知の通りこの業界は、残念ながらコンテンツの「パクリ」が日常茶飯事ですので。

しかし本当にこのままで良いのでしょうか。実務家としては、研修の費用対効果が求められるとすれば、研修を「探索財」として捉えたくなりますし、私はそうあるべきだと思います。気の利いた研修ベンダーは研修を「探索財」とすべく、さまざまな情報を事前に提供しています。私に対しても、「顧客がどういう研修をする人なのか知りたがっているので、研修中の動画を撮影させてほしい」というリクエストが来ます。

先日ニュースを見ていましたら、子供の将来の夢としてサッカー選手、医者に続いて「YouTuber」が3位。インスタグラムも盛り上がっています。こうした時代ですから、映像を含めて研修がどのようなものになるか、その詳細を事前に顧客に伝えるのは時代の流れであると思います。

お医者さんにもインフォームドコンセントという考え方が広まり、従来の医療現場とは異なってきました。先日の法事では、お坊さんがお経の説明を事前にしていました。事前説明を受けても読経の最中は相変わらず何を言っているのか分かりませんでしたが。

人材開発の実務家とベンダーの両方の立場を経験した者としては、研修を探索財とする努力が双方の立場から求められていると実感します。

2024年05月09日