2009年からGEクロトンビルで教えるリーダーシッププログラムに新規コースが追加されました。そのコースはEQが中心的な位置を占めており、そのコースを教える立場の人間として、脳の働きや内分泌ホルモン等の情動に対する作用について学ぶ必要がありました。
これをきっかけとして脳科学に興味を持ち始めて、関連図書をいろいろ読みました。そこから得られた知見は、リーダーシップを教えるときに従来は心理学をベースとしてきましたが、脳科学をその背景として加えることができるようになりました。
ところがこの脳科学に関連する話を研修の場などで行う場合に、常に気をつけなければならないことがあります。
それは昨日まで常識として信じられてきたことが、今日から間違いであるといったように、常に最新情報としてアップデートするということです。
たとえば、男性の脳と女性の脳は構造的に異なる、と長く信じられてきましたが、最近の研究によって構造自体には男女差はほぼないということが分かりました。こうした新事実がもたらされたのは、MRIやPETなどの画像診断機器が発達したことによって、脳の活動がより詳細に分かるようになったためです。
脳科学の分野においては、画像診断機器などの発達によって新しい知見が得られるというインパクトがありますが、果たしてリーダーシップやマネジメントの世界ではどうでしょうか。アートとサイエンスの違いだといって片付けられることでしょうか。
もちろんさまざまな研究者たちや人事コンサルティング会社が実証的な研究をしています。リーダーシップやマネジメントについての研究では、その「行動」に焦点が当たります。そしてその行動の源泉として動機となる要因を特定しようとします。そこまでの調査結果について述べたレポート、論文や書籍はたくさんあります。
私の関心は、その行動や動機のさらなる背景として脳がどのように作用しているのかということです。
こうした切り口を持って物事を考えていると人の行動をとても興味深く観察できます。